絶対、逃がさない!(短編)
 初めて出会ったのは、幼稚園の入園式のときだった。

 ふわふわのかみをリボンでサイドに束ねたかわいらしい女の子が隣に座ったとき、おれはほとんど無意識に手を伸ばしてその髪に触れた。



 わたがしみたいな、柔らかい髪。



 つい、くいってひっぱってみたら、女の子は大きな目を潤ませて、おれをみた。

 
 ・・・その顔があまりに可愛くて、おれはさらに強く引っ張ってしまい、とうとう彼女は大声を上げて泣き出した。

 先生や親が集まってきて、おれは怒られたが、ちっとも反省しなかった。



 それがはじまりで・・・。

 それから怒られても怒られても、おれは懲りなかった。



 だって・・・陽菜の泣き顔は可愛かったんだ。くせになるほどに。



 だから、もっと見たいと思って、それからほぼ毎日、泣かそうと追い掛け回し、それを実行していたおれは・・・かなり、あぶないお子様だったろう。



 当然、すっかり、おれは陽菜に嫌われた。

 
 



 
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