絶対、逃がさない!(短編)

 といっても、陽菜の中のおれのデータを書き換えるチャンスは、今日までなかった。



 当然、いつものように、陽菜は逃げる。

 電車が駅について、扉が開いたとたん、駆け出した。



 馬鹿! 雨でぬれてるのに、そんなあせったら、絶対にこける。


 
 ・・・とおもったら、見事、階段の手前でしりもちをついた。



 おれはあせって、電車からおりた。あせりすぎて、傘を電車におき忘れてしまうほどに。



 駆け寄ったけど、おれは手が出せなかった。

 陽菜が、おれを見て、すぐに泣きそうな顔をして、うつむいたからだ。



 おれが手を出そうとすると、泣き出す・・・。



 手をこまねいていると、横から和也のやつが手を差し出した。

 優しく、陽菜を助けおこしている。

 陽菜は、礼をいって、少し笑顔を向けたりしている。

   
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