狼のト・リ・コ
またその話。



「別に。親が決めたことなんで、仕方ないんじゃないんですか?」



きっと、ほかの女子が私の立場だったら、きっと泣いて喜ぶんだろう。

こんなお祝いの言葉さえも、死ぬほど嬉しいのかもしれない。

先生は、私の冷めた答えが意外だったのか、不思議そうな顔をしている。



「嬉しくないのか?」

「全く」

「それじゃあ、婚約破棄したいのか?」

「そうですね。まぁ、ムリですけど」



クラスのみんなは唖然としている。

私をアンタらと一緒にしてほしくないんだけど。

段々とイライラしてきた頃、担任はようやくHRを始めた。

その後も、教室移動のたびに「おめでとう」と声をかけられた。

一部の女子にはだいぶ睨まれたけど。

教室にいるだけでも、廊下から見られるわで、一日中動物園のパンダ気分だった。



「はぁ、疲れた」

「ははっ、お疲れ~。でもこの後はパーティーだよ?大丈夫?」

「行きたくないよ。めんどくさい」

「めんどくさいって・・・婚約パーティーでしょ?もう・・・」



メチャクチャ呆れられてる。

婚約でも何でもいいけど、眠いし疲れたし寝たいし。

めんどくさい以前にどうでもいいんだもん。
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