狼のト・リ・コ
イライラ過ごしていると、ようやく家に着いた。

いつもはもっと短く感じるのに、今日はやけに長く感じる・・・。

どれもこれも悠斗のせいっ!



「お帰りなさいませ、玲様、悠斗様」



家に入ると、お手伝いさんの川村さんが出迎えてくれた。

いつも一緒に出迎えてくれるメイドさんは、今日はパーティーの準備やら何やらで忙しいみたいで皆動き回っている。



「・・・ただいまっ!」



川村さんは全く持って悪くないけど、やっぱり気分が優れなくて不機嫌な声色になった。

ヤケ気味だ・・・。

川村さんはクスクスと笑っている。

あぁ、心広くてよかったぁ。



「あ、ごめんなさいっ!」

「いえいえ。いいんですよ。でも、せっかくのパーティーの日にどうされたんですか?」

「パーティー、ねぇ」



悠斗と婚約なんてメチャクチャ最悪。

もうヤダ・・・。

はぁ、とため息を漏らす私に、川村さんは苦笑した。



「コラ、ため息つくんじゃねぇ」

「うっさい!この二重人格男!」

「んだと?」

「まぁまぁ、仲良くしてくださいな。では、私は仕事に戻りますので。お二人とも着替えてきてくださいね。北原様はもうお着きになられてますので」



北原って、もしかして・・・恭のこと?

恭は、中学のとき仲が良かった友達。

無駄にモテてたな、なんてどうでもいいことを思い出した。

今はメールはするけど、お互い忙しくて遊べてない。

でも、なんで恭・・・?

まぁ、別にパーティーに来るのはおかしくないけど。

だって財閥の人だし。

それにしても、なんでわざわざ川原さん、恭がもう着いてるなんて言ったの?

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