【短編】嘘つきなキミに、キス。
『まぁ、確かにアイツは美人だよな。清楚な身なりのくせに、中身は淫らってか?』
うっとりとするような目つきで、ニヤリと笑う。
あぁ。
やっぱりコイツも、男か。
『……そんなんじゃねぇよ』
そうつぶやいた後、胸の中にしこりが残った気がした。
何だってんだ。
訳分かんねぇ。
『ほんとかよ〜』
俺をからかう声に、何も返すことができなかった。
「――――…要」
いつのまにか冴島は俺から離れた場所にいた。
ついさっきまで触れ合っていた部分が、急に冷たくなる。
「ごめんね。変なこと言って」
そう言って冴島は―――泣いた。
「嫌だったよね。こんな女となんて」
「冴島」
「忘れて」
あー、もう。
泣くんなら、そんなこと言うなよ。