prayGirl
「謹慎くらったぁ!?」

三好は大袈裟なリアクションをして俺に次の言葉を促す。

「なんでさ!」

「うるせぇよ、耳元で叫ぶな」

こいつのせいでクラス中が俺に釘付けだ。

悪い方の意味で。

理科準備室とかいう薬品独特の変な臭いのする部屋で、俺はあろうことかマジ切れしてしまった。

村上は俺を叱咤するために呼んでおきながら授業態度は悪くないだとかわけのわからない話を始めたのだ。

「成績もまだ伸びるだろうから頑張りなさい」と一度話を切って、今度は俺から目を逸らした。

そして言うのだ。

「あなた、沖野恵と仲がいいわよね?」

「だから何なんですか」

「こんなことはあまり言いたくないんだけど、やっぱり、沖野恵は…ねぇ?」

腹がたった。

「ほらあの子、なんだか不思議と影響力あるでしょう?鈴木くん、仲がいいから私少し心配だったのよ。」

友人が馬鹿にされてるのに怒りを感じたわけじゃない。

あいつは、沖野は俺が守ってやらなきゃいけないほど弱くない。

「鈴木くん最近ちょっと、授業中に寝たり話したりするでしょう?本当は出来るのに、悪ぶるのは別に格好いいことじゃないのよ。あなた達くらいの年頃だと勘違いするみたいだけど…沖野恵なんて」

村上が小さく悲鳴をあげた。

「黙れよ…」

真っ赤に染まる顔。

俺は灰色のデスクを殴り付けた拳をもう一度振り上げる。

沖野は関係ない。

俺は俺だ。

誰かに影響されてころころ性格変わるほど、俺は安くない。

勘違いしているのはてめぇの方だ。

村上は立ち上がって叫ぶ。

何を言っているのか最初聞こえなかった。

灰色のデスクにぶつかった第二関節が痛くて、少しだけ後悔する。

不細工な絵面がひどく滑稽で、なんだか笑えてきた。

「あなた!鈴木浩一…!私をなんだと、教師を馬鹿にしているの!指導を…謹慎!謹慎です!指導室に行きなさい…!」
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