prayGirl
知之の場合

いつもこうだ。

二人は俺をここに置いて、何処か別の世界を生きている。

二人とも、自ら誰かに関わろうとなんてしない。

二人とも、俺の親友なのに。

親友なんて言うと逆に嘘臭いけど、その肩書きさえなければ本当に置いていかれそうだった。

全てを受け流す鈴木。

全てを撥ね除ける沖野。

だからこそ、今日鈴木がキレたのには驚いた。

感情が乱れるのは相手の言葉を受け入れたからだ。

キーワードはきっと沖野恵。

理由は確かに鈴木の言う通りなのかもしれないが、やっぱり沖野の名前でなければここまでしない気がする。

沖野も沖野だ。

否定と拒絶だけで自我を保っているくせに、あいつ…大樹とかいう奴の言うことには従う。

大樹が沖野の何なのかはよく解らない。

そもそも俺はあいつらの何なのか。

考え始めると思考は嫌な方にばかり進む。

醜いのも女々しいのもわかってるんだが、でもどうしようもないんだ。

だから俺は笑う。

軽薄に笑う。

あいつらにとって俺がモノクロの風景になってしまうくらいなら、と。

わざとらしいくらい大声で、あいつらの一番傍で笑う。
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