prayGirl
長い夢でも見ていたかのようにぼんやりした意識の中で、私は大樹の車に乗り込んだ。
霧掛かった脳内に直接声が届く。
「今日は駅裏のスタジオだよね。荷物は?」
「持ってる」
「楽譜忘れてない?」
「持ってるから。早く行こ」
助手席でシートベルトもせずに大樹を促した。
窓の外の景色がゆっくり動き出す。
「危ないよ」
前を向いたままで「ベルトして」と付け足す。
スタジオまでは10分程度だ。
お前が上手く運転すればそれで済むじゃないか。
そんなことを思いながらも私は大樹の言うとおりにする。
窮屈だ。
後部座席でケイがクスクスと笑う。
大樹には聞こえない笑い声が車内で反響した。