prayGirl
知之の場合
「鈴木の停学って、どうせまた沖野絡みなんだろ?」

中村が興味津々で問い掛けてくる。

こいつは普段真面目なくせに人を馬鹿にできるイベントには敏感だった。

嫌な奴だ。

でもそれを知りたかったのは中村だけではないらしく、クラスにいた連中の殆んどがこちらを向いた。

まだ8時過ぎ。

始業までは30分もある。

沖野がいなくてよかったと切実に思った。

あいつがいたら多分また一瞬でクラスから孤立できるようなダークな一言を悪意と一緒に吐き出しているところだろう。

どうしてあいつは協調性とかその類いのものを持ち合わせてないんだ。

大人は沖野を素直じゃないだとか言うけど、むしろあいつは不器用なくらい真っ直ぐなんじゃないのか?

あの刺は思春期特有の意地なんかじゃなく、装飾されてない本物のココロなんじゃないのか?

それとも、そんな考え方をする俺が子供なんだろうか。

わからない。

あいつらみたいな大人より、沖野や鈴木のほうがよっぽど大人に見える時がある。

それすらも俺が子供だからなのか?

いつまで考えても答えは出ない。

ならどうして考えるんだろう。

無駄だ。

無駄なことはやめるべきだ。

なのに……

「ねぇ三好、聞いてる?」

気付けばいつの間にか俺の席のまわりには何人かのクラスメイトが集まっていた。

「てか沖野ってちょっと怖くね?」

図々しくも沖野の席に座った女子がそんなことを口にした。

周囲が同意に頷く。

「学校もあんまこないしさぁ、声ちょっと低いし」

声関係ねぇだろ…。

「文化祭ん時もあんま協力してくれなかったしぃ」

それはあんたらが沖野を怖がって仕事回さなかっただけだから。

なに事実偽造しちゃってんの。

「なんか他校の不良と付き合ってるんだってー」

「知ってる、バックに族がついてるって聞いたよ」

いつの時代の不良だよ。

この街でそんな怖がられてる族はいねぇよ?

てか偽造通り越して捏造か。

まぁ協調性がないのは確かだし、あいつにも悪いとこはあるんだろうけど。

それにしてもひどい言われようだな。
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