prayGirl
俺は一瞬で脳を生き返らせる。

なんとか言い訳を見つけなくては。

「それが沖野の両親が今日揃いも揃って出張だとかで家に帰って来れないらしくあの状態の沖野を一人にするのは忍びないかと」

「親父さんは出張だとして沖野の家は確かお袋さんは専業主婦のはずだよな?」

「そういえば沖野の奴母方の親戚に不幸があったとかなかったとかで母さんは暫く実家に帰るって言ってた気がします」

「ほぅ。なら私からも一言入れておこうか。沖野の緊急連絡先の一つがお袋さんの携帯だったはずだ」

「なんかこの前携帯壊れちゃったらしいっすよ」


少しの沈黙。

間をあけて、橋元が豪快に笑った。

「お前なかなかやるじゃないか。それで沖野はどこにいる?」

「あまりにも体調が悪そうなので下駄箱で待たせてます」

というか沖野はきっと俺に話合わせれないだろうから下駄箱で待機させておいた。

正直連れてこなくて正解だったと思うし。

「そうか、もぅとっとと帰れ。ただし数学の宿題だけはちゃんとやること」

橋元はそう言うと手をひらひらさせて俺を追い払った。

俺は申し訳程度に頭を下げて踵を返した。

職員室から立ち去ろうと廊下を早足で進む。

「そうだ三好!」

呼び止められて、振り替える。

今のなし、とか言うなよ…?

「なんスか、橋元先生」

橋元は少しだけ唇を上げる。

この表情だけはどうも色っぽい。

多分格好とのギャップが更にそれを引き立てるんだと思う。

「鈴木にヨロシクな」

全てお見通しだったようだ。
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