prayGirl
「やべぇ…かなり美味かった」

三好が箸を置いて言った。同感。そのまま床に転がる。

「食って寝たら豚になるよ」

「俺太らない体質だから大丈夫」

「あ、そ」

そう言うと沖野は食器を重ねて片付け始めた。
水に浸けて、こちらを向く。

「ねぇ、鍋、持ってきてよ。洗うから」

「はぁ〜…お前行動早すぎ!」

「"おかん"かお前は」

「ばか!汚れはこびり付いたら取れないんだよ!?」

その台詞に思わず俺と三好は吹き出した。
沖野も顔を真っ赤にして「うるさいなぁ!」と叫んだ。

こういう時間は楽しい。
口に出すのは恥ずかしいけど、確かにその時俺は思ったんだ。

ずっとこいつらといたい。
この時間が終わらなければいいのに。

「だから!鍋!」

「はいはい」

俺は鍋を持って洗い場にむかう。

すると三好が起き上がって、思い出したように

「あ。俺ヨーグルト食いたいかも」

「かもってなんだよ」

「ちょっと買ってくるわぁ」

「じゃぁ私ゼリーがいい」

沖野が洗剤で泡塗れになった手を上げる。
なんでこいつは時々こんなに幼くなるのかね。

「鈴木は?」

「じゃぁ、俺もゼリー」

「はいはい、プリンね。おっけー」

「いや、ゼリー。出来れば柑橘系の」

「え?カスタード焼きプリン?あるかなぁ…まぁ探してくるよ」

「ゼリー!!」

「いってきまぁーす」

三好は財布と携帯だけ持つと玄関に走った。
俺は鍋のせいで追い掛けることもできずに、ただ「ゼリーだからなぁ!」と叫ぶ。

隣を見ると、沖野が腹を抱えて笑っていた。
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