prayGirl
知之の場合
プリン1つとゼリーを2つ買って帰ろう。
それが俺のやり方。
雪がふんわりと積もった道の上を歩くのはなんだか気持ちがいい。
振り向くと自分の足跡だけが白い世界に浮き上がって見えた。
せっかく鍋で体を温めたのに、と思いながらもこの温度差が妙に心地いい。
買い出し係で正解だな。
それにしても、
「俺ってば恋のキューピッド?」
呟いた台詞が空に消えて虚しい。
誰も答えてくれないのなんてわかりきってるけど。
沖野は多分鈴木のことが好きだと思う。
あの沖野のことだから、自分の気持ちに気付いてるかどうかも怪しいもんだが。
鈴木はよくわからない。
いろんな話をよくするけど、色恋沙汰は聞いたことがない気がする。
どんな女が好きだとか、あいつの口からそんな話が出て来ることなんてなかった。
だから楽だったのかもしれない。
3人ともが1人を求めなかったから、これまでやってこれたのかもしれない。
じゃあ俺が今やってることは間違っているのか?
それは違う。
人は変わっていくものだ。
俺達の関係も、歪みを修正していかなくちゃならない時期が来たんだ。
鈴木。
沖野。
俺はそろそろ、前に進みたいよ。