prayGirl
昼休みが終わりに近付いた頃、空になったパンの袋で遊びながら三好がため息を吐いた。
「あいつはさぁ」
「あいつ?」
「沖野、あいつ、何処行ったか知ってる?」
それは質問というよりはクイズのような聞き方だった。
三好は知っているのだろうか。
「興味ない」
俺は切り捨てるように答えた。
気にならないわけではないし、本人に聞いてみたこともある。
沖野は答えなかった。
俯いて呟くように何か言葉を吐いたが、その時俺は聞き取れず、聞き返すと「関係ないでしょ!」と言って走って行った。
そんなに聞かれたくなかったのだろうか。
しかしそれなら最初の呟きは何だったのだろう。
あの時の沖野が何故だかいつもより小さく見えたのを覚えている。
ひどく弱々しくて、すぐに壊れてしまいそうだった。
「鈴木?」
「なんでもない」
「なんだよぉ〜お前がマジな顔してたら気になる」
「うっさい。チャイムなるぞ」
三好は「はいはい」とか言いながら自分の席に戻って行った。
こいつは知っているのか。
俺が知らないことまで。
沖野にとって俺と三好は対等ではないらしい。
他人事のようにそんなことを考えていた。