こんな私でも愛されますか
携帯がメールを着信を告げた。

『今度、どこか行かないか?お前の誕生日も近いし』
 
私が大学時代から付き合ってる彼氏、秀太郎からのメールだ。

私の誕生日……カレンダーを見ると、今度の日曜日が私の誕生日になっている。

週明けに原稿上げなくてはいけないのに、秀太郎の呑気なメールに苛立ちを感じる。

苛立ちに身を任せ、インクにペンをぶっ差し、ガリガリとペン入れを始めた。

切羽詰った私にとって秀太郎の存在は吹けば飛ぶような塵と同等であった。

秀太郎には、私の職業はイラストレーターと言ってある。

イメージとしては、よく女の子の雑誌に載っているようなふんわりしたイラストを描いているようなイラストレーターである。
 

大学四年のときにエロ漫画家としてデビューした私は、そのままエロ漫画を家で描き続けている。

デビューしたての頃の私は、秀太郎との付き合いがまだ浅いこともあり、エロ漫画家だということを言いそびれたまま、現在に至る。

イラストレーターという職業だと、秀太郎を言いくるめたのだ。

秀太郎は中小企業に就職が決まった。

そのままダラダラと交際がいまだに続いている。月に一度会えればいいほうだ。

秀太郎もそれなりに忙しいらしい。

浮気しているのではないかとか、そんなことを考える余裕は私にはない。

秀太郎もこんなに汚い女が自分の彼女だなんて夢にも思ってないだろう。
 

些細な収入で、なんとか一人暮らしを続けている私だが、一度も秀太郎を家に上げたことがない。
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