こんな私でも愛されますか
理由はただ一つ。資料としてのエロ本があちこちに転がり、足の踏み場もない。

布団なんていつ干したか忘れてしまったほどの万年床である。

机はインクの染みで薄汚いし、私自身にはスクリーントーンの切れ端があちこちについている。

こんなはずじゃなかった。

私だってデビューする前は毎日シャワーを浴びて、それなりに身だしなみに気を使う女子だったのだ。

「女子!女子!女子ーっ!!」
 

叫んだところで、私の中の女子成分が増えるわけでもない。

だが、叫ばずにはいられなかった。

「あうちっ!!」
 

インクが倒れ、あっという間に原稿が真っ黒に染まった。
 

私、絶対にどこかおかしい……。

脳内から分泌される物質がおかしいのか。
 

こぼれたインクを拭きながら、私はどこかおかしいという確信が私の中で着々と芽生え始めている。
 

頭がおかしくなったと言えば、秀太郎は同情して結婚してくれるかも。

いや、秀太郎は逃げるかもしれない。
 

頭がおかしくなったと言うんじゃなくて、精神的にちょっと参っちゃったみたいなことを言えばいいのかもしれない。
 

頭がおかしい場合は、病院の何科にかかればいいのだろうか。

私はネットで近所の病院を検索した。

精神科……ちょっとハードル高い。

心療内科だったら、いまの時代、訪れやすい。

ほら、よく心の風邪とか言うじゃないか。
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