こんな私でも愛されますか
正直に言ってしまったと私は後悔した。

「眠たくても寝られないということは、何かしているんですか?」

もう降参だ、正直に言うしかないだろう。

「仕事ですけど……」

「家で仕事してるの?」

「よく分かりますね」

「外で働いていたら、そんな感じじゃないだろうね……」

そんな感じっていうのは、この汚い身なりのことを言っているのか。

よくもズケズケと言ってくれるじゃないか、この医者。

「何かクスリとかありませんか?」

私はとにかく秀太郎に病気だということを証明したかった。

こんなクスリを飲んでるのと、か弱く言うのだ。

「昼間に三十分でいいから散歩すること。そして、シャワーでいいから、身体を清潔にすること。これを二週間やって変わらなければ、また来なさい」

医者は人間として当たり前のことをしなさいと言いたいらしい。

昼間に三十分散歩だなんてそんなことできるなら、もうすでにやっている。

今まで何度もチャレンジしたが、太陽が眩しすぎてかなわなかった。

「ありがとうございました」

頭を下げると、さっさと会計を済ませ、メンタルクリニックを後にした。

か弱い私を演じて結婚してもらう計画は無残に散った。
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