儚き蝶

それは放課後、私が本を借りようとカウンター当番をしていた先輩に本を渡したとき。

いつものように「お願いします」と言ったら、先輩は数秒間本を見つめ急にこっちを向いて微笑んできた。

「この本好きなの？前にも借りてたよね？」

いきなり話しかけられたものだから、とっさのことに声が出せなくなってしまった。

なおも微笑みかけてくる先輩に私ははっとして、顔を赤く染めながら「は、はい。」と裏がえった返事をしてしまった。

そのことにますます顔を真っ赤にする私に先輩が、

「そうなんだ。僕もこの本大好きだよ。」

なんて微笑みながら言ってくるものだから、もう私は沸騰寸前でなんにも言えなくなってしまった。