儚き蝶
「今日も楽しかったよ。それじゃあ、お休み。」
神崎先輩が微笑みながらそう言った。
これが2人きりになる最後のチャンスかもしれないと思った私は、とっさに告白してしまおうと思った。
だけど口から出てきたのは、
「こちらこそ楽しかったです。お休みなさい。気をつけて。」
なんてありきたりの言葉だった。
なんて情けないんだと自分を怒鳴りつけたい気持ちをこらえて、神崎先輩に手を振った。
先輩も手を振りかえしてくれながら帰って行った。
またチャンスが来るのを祈って頑張ろうと意気込み、私は家に入っていった。
だけど、このときの私はなんとも思わなかったんだ。
そう、神崎先輩の心に大きな闇が渦巻いてるなんてちっとも・・・。