儚き蝶
途中からもう伊織君の声なんて聞こえなかった。
あの神崎先輩が無愛想で有名?
その言葉に耳を疑った。
無愛想な態度なんて一度もとられたことなんてない。
そんなこと信じられない。
「だからさ、少し先輩と距離おいて橘もクラスメートのやつらと・・・って、聞いてるか?」
伊織君のその言葉にはっと我にかえった。
「あ、うん、聞いてるよ。心配してくれるのは嬉しいけど私なら大丈夫だよ。ありがとう。それじゃあまたね。」
早口でそう告げると私は教室から飛び出した。
「あっ、おい!橘!」
伊織君の声を背中に受けながら、私は急いで図書室にむかった。