儚き蝶

なんて綺麗な人なんだろう。

長く上に向いた睫毛に赤い唇、雪のように白い肌、簡単に折れてしまいそうな華奢な身体。

黒縁眼鏡に肩に届きそうな黒いさらさらした髪。

そして憂いを浮かべた顔。

彼の細い綺麗な指が静かに本のページをめくる。

私は時が経つのも忘れて彼を見つめていた。

しばらくするとふいに彼が顔を上げて私に気づいたのかこちらに顔を向ける。

少し見つめたあと優しい眼差しで微笑んできた。

その瞬間私の顔が真っ赤に染まったのが分かった。

多分その時に私の心は彼に奪われたんだと思う。

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