僕らの恋は儚く散りゆく桜の様で
第1章 桜色の季節

木の下で


‘サァー………'

他愛もない会話の間に通る風は、まだ青らしくて。
少しの透明感に、桜を乗せ吹きはなたれた。
俺はこの時、初めて春の訪れを感じる。
「……と…!章人っ!」
「あっ、ごめん」
俺の耳元で、俺の名を叫ぶのは、小学校からの親友脩斗(しゅうと)。
俺は今日大学の入学式に来ていた。
最近まで入学と言うと、硬い制服に袖を通し、みんなと同じことにそっと胸を撫で下ろしたりもしていた。
でも今年ばかりは、それぞれのスーツを身に纏い、少し…いやかなりの不安で風の音を聞くのに、頭が持っていかれていた。
「いいよな〜スーツ!憧れだったんだよ!」
脩斗は、かなりテンションが高い様子。
基本物静かに過ごしている俺としては、このテンションに助けられることがないわけじゃない。
「オレは制服のが落ち着くけど?」
そう言い俺の肩に顎を乗せたのは、高校で同じクラスだった。
菫(すみれ)。
頭が良くて、クールな菫は、いつも落ち着いた口調で、俺の胸を撫で下ろす。
「俺は私服だな」
俺も自分の意見を述べた。
「ほら、集合かかってるよ!」
水やりのおばさんに集合のことを告げられ俺たちは、体育館へと向かった。

‘ざざざざざざざ…………'

おかしな音に、俺は体育館裏に行った。
「ちょっと抜けるわ」

‘ざざざざざざざざざざざざざ'

近づく音に、自然と足が早くなる。
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