僕らの恋は儚く散りゆく桜の様で
‘ざざざざざざ・・・ざざ・・’
「あっ・・・・。」
今にも聞こえなくなりそうな声を放った女と目が合った。
その女がおかしな音の正体で、俺の運命を変える女。
なんて今は信じられない。
だって目の前に立っている女は、紫色の目をして軽い金髪の髪に絵の具を散らばしている。
鮮やかなサロペットにも絵の具が広がっていて、とにかく澄んだ目で俺を見つめていた。
「何してんだよ。」
俺はそっと話しかけて見る。
そしたら、この女は一瞬嫌そうな顔をして、大きな芝生に筆で絵を書き始めた。
「何よ。あなたこそ誰?」
ずいぶんな態度だ。
「は?俺??」
「そうよ。あなたしかいないでしょ?」
俺もさすがに腹が立つ。
俺から名乗ってなんかやらないことにした。
「お前こそ誰だよ。」
「あたし?あたしは、今日からこの学校に通う輝柚子(かがやゆず)。美術専門よ。」
案外あっさり自己紹介をされてしまった。
「・・・。」
返す言葉がなくなる。
「何よ。人に名乗らせといて自分は名乗らないわけ?」
柚子と名乗る女は、一向にこっちを見ようとしない。
「あぁ。俺はお前と同じ新入生の戸塚章人(とづかあきと)。スポーツ専門家、バスケ科。」
この時思った。
何故こんな知らないやつに俺は自己紹介をしているんだろう・・・って。
もうきっと入学式は始まった。
「その‘お前’って言うのやめて。‘柚子’でいいわよ。ていうか、あなた。こんな所に居ていいの?式に出なくちゃ。」
この女はやっぱり変だ。
「柚子?こそ出なくていいのかよ。」
何かと友達第一号みたいだ。