兄さんには腹括ってもらわにゃならんけぇの


「…ずるい」

泣きそうになる。
急にでてきたどこぞの馬の骨を、
嬉しそうに可愛がる親父。
何回も絶望してきたはずなのに、
まだ諦められない。

俺より格好良くて、
頭が良くて、
性格良くて、
運動神経抜群で…
俺以外の男に愛される親父。

親父の隣の部屋で、
喘ぎ声を聞くたび、
諦めようって気持ちが強くなって。
家を出た。

出て行くと言ったとき、
親父が嬉しそうに笑う顔をみて。
嬉しかった。
初めての俺だけの笑顔。
俺以外のじゃない。
他の誰でもない、
俺だけの。

そんな顔されたら、
また親父だけを強く好きになって。
親父は俺に
いつもは笑顔をみせないって、
知らないんだろうという事実に
傷付いて。
痛いと思った。
俺、痛いよ。
親父。



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