兄さんには腹括ってもらわにゃならんけぇの

「へぇ…もしかして処女?」

付き合ってられっか。
男を振り払おうと歩くスピードを速める。

「 2104 」

すれ違いざま、男は確かにそう言った。
髪は金、肌は白。
瞳は茶。
顔は憶えてる。
身長 180.2cm。
体重は測定不能。
武器を持ってはいなかった。

あいつはコードネームを知っていた。
俺達を知っていた。

俺達のスタジオの方から男は歩いてきた。
まさか。

「…秋」

ゆっくり歩いてスタジオへ向かう。
この行動をあいつに悟られないように。

スタジオの秋の部屋に入ると、
その姿を確認し、安堵した。
鍵が開いてたから、死んだかと思った。
そう言いそうになって口をつぐむ。
俺達は絶対の信頼で成り立っている、
ということを思い出したからだ。
一瞬でも忘れていた自分が恥ずかしい。

「おかえり」

パソコンから目も離さないで言う彼は、
至って不機嫌そうで、彼らしい。
こいつのこういうところに信頼できると思う。

「調べてほしいことがある」

「そう言うと思った」

不機嫌そうな顔を
さらに不機嫌にして彼は言った。




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