兄さんには腹括ってもらわにゃならんけぇの
翌朝スタジオのインターホンが鳴って、
安眠を妨害された俺はドアを乱暴に開けた。
「っ、昨日の」
「憶えててくれたんだ」
俺はドアを閉めようとするが、
男の脚が邪魔で思うようにいかない。
「痛いって、臣くん。
脚、脚。
無理矢理閉めようとしちゃ駄目だよ。
もう、可愛いなぁ」
「いつか殺す」
「臣くん、それ卑猥。
って、痛っ、ごめ、ごめんって」
「で?何しにきたの?」
「このスタジオの隣に引越してきた、
黒崎 識です。
ってことでお邪魔します」
「うぁ、っておい、待てよ」
この馬鹿力。
人の家に勝手に入ってんじゃねぇよ。
そう言ってしまおうとして、やめた。
こいつが黒か白か確かめるチャンスだ。
「臣くん、部屋どこ?」
こいつは俺の名前を知っていた。
黒だ。
つまり同業者だ。
俺達の存在を知っている。
狙いは…
「ん…ちょ、何すんだ…ぁ、ぅあ」
「…えっろ」
頭がとろんってなって意識が遠のく。
何か飲ま、せ…やが…っ…
視界が黒くなって、
あいつの方に倒れこんだ。