いつかの姫といつかの僕
「くくく、いい気味だ。」



お城に響きわたった声


さっき聞いたあの声だ…



「お前はいったい誰なんだ」


「私かい?私は悪魔だよ。」



アクマ?

悪魔なんて想像上の生き物
いや生き物ではない。

けどさっきのあの顔
人間とは思えない声

悪魔ではないと否定出来るものはなく認めてしまうしかなかった。



「姫を返せ!」




「お前なんかに返すものか、ゆうゆうと生きてきたお前に」





「…」


言い返せなかった。

確かに僕はなに不便なく生きてきた。


気付いたら愛しい姫と家来と家族しかいない
不思議な国にいた。






「一言言っておく。ここには姫はいない」



「!?」



「ここは悪魔の国。お前らがいた国ではない」





なにもかもがそっくりなこの国


そっくりなんてもんじゃない。

まったく同じ国のように思えた。




「馬鹿ゆうな!悪魔の国なわけがない」



「外をみてみろ」

悪魔が言った。


もう夜になっていた。
その世界には
きらきら光る星たちも
お月様も消え


紫のなにもみえない空と
みたこともない獣たちのおぞましい声が響き渡っていた。
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