めあり、ほんとうのわたし
「めありはうちに来たことあったっけ?」

「前に、一度だけ。藤原様とお会いしたときに」

「そう。じゃあ、うちに入るのは木曜に変更しといた方がいいな。大体の建物とか、庭の配置なんかを把握しておいてもらわないと、ミイラ取りがミイラになっちゃぁ困るからな。ついでに覚えとく? コレの使い方」

机に何気なく置かれた銃。

めありは身体で拒否した。

「あ、そ。覚えとくと楽なんだけどな」

「その、楽な感じが嫌なんです・・・・・・」

「そういいながら、めありもだいぶ躊躇なく人を殺せるようになっただろ?」


「・・・・・・わたし、怖いんです」


「何が」


「自分が。自分の本当の身体が手に入っていく喜びが、人の命を奪うことの罪に勝っていくんです」


アンヌ・マリィはめありの言葉を聞いて、はじかれるように、高らかに笑った。

そして、めありをその作り物の眼でじっと見て、こう言った。

「それは、とても正しい感情なんだよ、めあり。卑下する必要はない。お前には叶えたい願いがある。その願いをかなえるために『仕事』をしているんだ」

口元は優しそうなふりをしても、マリィの眼は笑っていない。

この男が何を考えているか、めありにはよくわからなくなった。

「マリィさん」

「なぁに?」


「今回の仕事をわたしがするのは『わたし』だからですか?」
< 12 / 23 >

この作品をシェア

pagetop