めあり、ほんとうのわたし
「今回の仕事をわたしがするのは『わたし』だからですか?」


返事のないアンヌ・マリィに、もう一度同じ言葉をぶつけた。

しばしの沈黙。

マリィはまだ吸いさしのタバコを消して、二本目にすぐ火をつけた。

煙を深く吸いこむと、おおげさに天井に向かって煙を吹きだした。

椅子のきしむ音も、ふたりの吐息も、外を走る車の音も、全ての音がめありに流れこんでくる。


「そういえば諸川、元気してた?」

ふいをつかれて、めありはひどくあせった。

「同じことを先生もおっしゃってましたよ」

「ふーん。それで」

「マリィさんは忙しそうですが変わりないですよ、っていったら、あいつは機械だから、油させば不調は治るんだろって」

「今度あったら、女がいれば病気知らずのお前には負ける、っていっといてくれ」

「あと、わたしのこと、イマドキ珍しい、純情可憐なカンジがいいって・・・・・・いってくれてるみたいです」

「ふぅん。アイツって節操ないのな。自称『女』でもおかまいなしか」

アンヌ・マリィは、さらっとめありに釘をさす。

人を傷つける言葉を投げかけて、肝心の質問をはぐらかそうとする。

それがいつもの彼の手だった。


めありは、もう一度聞いた。


「マリィさんは今度の被害者がどんなひとか知ってて、わざと、わたしを選んだんですよね、そうですよね・・・・・・!」



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