めあり、ほんとうのわたし
わたしが欲しいもの
街に冷たい雨が降っている。
古びれたオフィス街のビルの屋上で、今、一人の男が絶命していく。
男自身が望んだこととはいえ、息が絶えていく苦しさのあまりもがく手が、最期の力で殺戮者の着ている雨合羽のフードを引きちぎる。
あらわになった顔に雨のしずくがかかる。
殺戮者は、抵抗する男のいまさらといった生への未練を断ち切るように、もう少しだけ、紐をきつくしめた。
そうやって1分ほどすると、騒がしいほどの抵抗は急に静寂に変わった。
あたりは雨と、遠くに聞こえる町の雑踏だけになった。
事切れてしまった男の手からフードをとり死体をビルとビルの隙間に投げ込む。
予想外の落下音の激しさには少し驚くが、あたりに気づいた様子はない。
ひととおりの仕事が終わると、ビルの屋上には、殺戮者の表情が消えた、さびしげな表情の大柄な青年だけが残った。
雨で濡れた黒髪が化粧を施した横顔にはりついている。
『彼』はその場所でしばらくの間、雨の音を聞いていた。
音を聞きながら、男が事切れていく感触を思い出していく。
(そういうの、信じているわけじゃないけど・・・・・・やっぱり魂が抜けていってるのかしら・・・・・・? この人も、他の人と同じ、その瞬間はすごく、軽くなった・・・・・・)
携帯が鳴る。
「はい」
-終わった?-
「はい」
-そうか。今、迎えをやらせてる。大通りまで出て、今から言うナンバーのタクシーをひろえ。覚えられるか?-
「たぶん、大丈夫だと思います」
-そうか。今日はもうゆっくり休んでいいよ。また連絡する-
「ありがとうございます・・・・・・」
-お疲れさま、めあり-
古びれたオフィス街のビルの屋上で、今、一人の男が絶命していく。
男自身が望んだこととはいえ、息が絶えていく苦しさのあまりもがく手が、最期の力で殺戮者の着ている雨合羽のフードを引きちぎる。
あらわになった顔に雨のしずくがかかる。
殺戮者は、抵抗する男のいまさらといった生への未練を断ち切るように、もう少しだけ、紐をきつくしめた。
そうやって1分ほどすると、騒がしいほどの抵抗は急に静寂に変わった。
あたりは雨と、遠くに聞こえる町の雑踏だけになった。
事切れてしまった男の手からフードをとり死体をビルとビルの隙間に投げ込む。
予想外の落下音の激しさには少し驚くが、あたりに気づいた様子はない。
ひととおりの仕事が終わると、ビルの屋上には、殺戮者の表情が消えた、さびしげな表情の大柄な青年だけが残った。
雨で濡れた黒髪が化粧を施した横顔にはりついている。
『彼』はその場所でしばらくの間、雨の音を聞いていた。
音を聞きながら、男が事切れていく感触を思い出していく。
(そういうの、信じているわけじゃないけど・・・・・・やっぱり魂が抜けていってるのかしら・・・・・・? この人も、他の人と同じ、その瞬間はすごく、軽くなった・・・・・・)
携帯が鳴る。
「はい」
-終わった?-
「はい」
-そうか。今、迎えをやらせてる。大通りまで出て、今から言うナンバーのタクシーをひろえ。覚えられるか?-
「たぶん、大丈夫だと思います」
-そうか。今日はもうゆっくり休んでいいよ。また連絡する-
「ありがとうございます・・・・・・」
-お疲れさま、めあり-