めあり、ほんとうのわたし
めありは月に一度、その男の墓を訪れる。


東京郊外にある、駅からかなり離れた墓地にに行くには、タクシーかバスを使ったほうがいいのだが、それでもめありは長い道のりを歩いていく。

たくさんの花と、生前好きだったお酒、たまに吸っていたタバコをもって。


東八道路沿いの墓地の近くには、少し前まで、世間を騒がせた少年殺人犯が収容されていた施設があった。

その彼とめありは、そう、年は離れていなかったはずだ。
 
一度アンヌ・マリィに聞いたことがある。あの少年は、マリィのお眼鏡に叶わなかったのかと。

マリィはいつものように淡々と

「ああ、あれは違うから。頭はいいだろうけど、自己顕示欲が強すぎて、仕事なんてこなせないよ。俺が欲しいのは依頼者の言うことをきいて、向こうの望みを叶えてあげる。つまりね、ビ・ジ・ネ・ス、なの。わかる?」

と返した。

アンヌ・マリィの考えていることは、毎度のことながら、めありによくわからない。

自分がバカなのか、マリィの頭が良すぎるのか・・・・・・。

「どっちも、どっちかな」

初夏の風が、めありの身体をするりと通り抜けていった。


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