朱月 蝶は舞う
陸「すげぇ………何でもお見通しってわけか。……俺には三つ年上の兄貴がいる。うちは大企業の一つなんだ。…まっ、兄貴が継ぐから俺はいいけど。でも、いつも俺は兄貴と比べられた…だから自分自身、自信ってものがなくなった。親父は兄貴のためならなんだってする。母親だって同じだ。俺はあいつらが嫌いだ。母親なんて、俺に『この子は弱い』としかいわねーし。」
ユ「陸…前に進もう。陸のお母さんは陸にどんなことがあっても立ち直れる『前に進める強い子』になってほしいから、そんなことを言ったんじゃない?陸、お兄さんに『嫌み』言われたことある?いつだって、優しくしてくれてない?」
陸「………っ、ない……嫌みいわれたことが……ない!しかもあいつ、俺が冷たく引き離しても優しくしてくる」
ユ「お兄さんは陸が大事なんだよきっと。みんな、陸に強くなって欲しいって思ってるんじゃないかな?」
陸「…………」
ユ「少しずつでいいから、話してみなよ。何かあったら聞くよあたしが。前に進もっ」
陸「ああ」
そういって、陸はあたしの頭をなでてくれた。今まで見たことがなかった笑顔で。そんな陸をみて、あたしも笑顔になった。