Love Difference 〜the long ago and the now〜

始まりは晴れ 終わりは晴れと嵐

その日は晴れ渡っていた。

その娘は足が速くて、元気で、明るくて、人なつっこいのが取り柄の、普通の五歳の町人だった。ただ二つ、父親が浪人だった事と、両親が殺されて、その娘が両親の顔を知らないという事を除けば。


★★


｢雷青ちゃん。この人が志乃丸様よ。｣

その女は、その娘に声をかけた。雷青と呼ばれた娘は、女に聞き返した。

｢お蘭さん。この町人みたいな人が、あの優しくて格好良いって評判の志乃丸様？｣

お蘭と呼ばれた女は説明した。

｢そう。志乃丸様直属の忍びを探している時、父親が浪人だった雷青ちゃんが選ばれたのよ。でも、こう見えても志乃丸様は武士の息子さんだから、言葉遣いに気を付けてね。｣

｢はい。分かりました。｣

雷青はそう返事をすると、志乃丸の前に進み出た。

｢初にお目にかかります。私、雷青と申す者でございます。以後、お見知りおきを。｣

片膝をつき、顔を下に向けて言う雷青。そこで志乃丸が口を開いた。

｢顔を上げて。｣