Love Difference 〜the long ago and the now〜
少女の行き先は将軍様長屋だった。
『将軍様長屋』とは呼び名で、当時の武士が町人に紛れ込んで生活する時に使用した長屋だった。
「志乃兄殿、只今戻りました!」
開口一番、そう叫んだのは、相も変わらず志乃丸に仕えている雷青だった。だが、その志乃丸の返事は無い。
「志乃兄殿ーっ!志乃兄殿〜っ?あれ、居ない?」
途方に暮れている雷青の前に蘭が現れた。
「あっ、お蘭殿!」
「雷青ちゃん、これ。」
蘭が差し出したのは、二枚の紙を一緒に畳んだ物だった。雷青は急いでその紙を開いた。
『 雷青へ
僕は行くよ。武士はもう居なくて良い。時代は変わったんだ。雷青が僕と一緒に居ると、雷青にまで迷惑をかけそうだから、僕は消える。
――契約は無かった事にしよう。無視してくれると良いな。雷青はもう、自由だからね。
志乃丸
追伸 雷青、今までありがとう。』