Love Difference 〜the long ago and the now〜
読んでいる途中に、雷青の目から涙が出て来た。そのまま、涙は流れ続ける。蘭は遠慮がちに声をかけた。

「雷青ちゃん、志乃兄様は但馬(たじま。今の兵庫県)に戻られたの。」

「但馬か…。遠いな。」

「そう、遠いの。どうする、雷青ちゃん?東京に残るでしょ?」

「行く。」

「行くって……、但馬に?」

「うん。但馬に…行く。」

すでに雷青は、志乃丸にもらった文箱に荷物を詰め始めている。

「ちょっとちょっと!路銀(旅行費)はどうするの?」

「五歳から直一郎殿にもらっていた金が沢山残ってる。」

雷青は紺色の布巾着を蘭に見せる。文箱には服や筆、墨汁や半紙も入っていた。半紙はざっと三十枚はあるだろう。
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