【短編】海に降る雪
■一日目
昨日、恋人が死んだ。
それを知ったのは朝礼時、先生の口から。
友達は私をなぐさめてくれた。
泣きながらで何を言っているかほとんど聞き取れなかったけど、きっとなぐさめてくれたんだろう。
うん、いい友達を持ったもんだ。
私を嫌ってる子達は、
「彼氏が死んでよく学校来れるよね」
と、つつ抜けの陰口で私の図太さをほめてくれた。
私はというと、
涙で顔をぐちゃぐちゃにして、彼氏がいない世界なんて生きてる価値ない!
ユウマ、私もすぐそっちに行くからね……
なんてことはまったく無く。
頭を巡るのは、
ご家族とは仲良くしてなかったから御通夜は遠慮しとこうとか、
電話帳から彼氏の名前を削除するべきかとか、
そんなこと。
涙すらでなかったから、目元の化粧のノリもすばらしい。
よく冷めてるって言われたり、クールな性格をうらましがられる。
けど私にとっては、コンプレックス。
やっぱり彼氏が死んで泣かないなんて、現役女子高生失格なんだろうな。
家に着くと、ベッドに横たわり、ユウマの顔を思い浮かべる。
よーし泣くぞ。今から絶対、泣いてやる。
プルルルル……
なんという間の悪い着信。嫌がらせかよ。
『もしもし、先日幽霊になりましたユウマといいますが』