【短編】海に降る雪
■一日目


 昨日、恋人が死んだ。





 それを知ったのは朝礼時、先生の口から。



 友達は私をなぐさめてくれた。

 泣きながらで何を言っているかほとんど聞き取れなかったけど、きっとなぐさめてくれたんだろう。



 うん、いい友達を持ったもんだ。



 私を嫌ってる子達は、


 「彼氏が死んでよく学校来れるよね」


 と、つつ抜けの陰口で私の図太さをほめてくれた。



 私はというと、


 涙で顔をぐちゃぐちゃにして、彼氏がいない世界なんて生きてる価値ない!
 ユウマ、私もすぐそっちに行くからね……




 なんてことはまったく無く。
 

 頭を巡るのは、

 ご家族とは仲良くしてなかったから御通夜は遠慮しとこうとか、

 電話帳から彼氏の名前を削除するべきかとか、

 そんなこと。



 涙すらでなかったから、目元の化粧のノリもすばらしい。


 よく冷めてるって言われたり、クールな性格をうらましがられる。

 けど私にとっては、コンプレックス。
 


 やっぱり彼氏が死んで泣かないなんて、現役女子高生失格なんだろうな。



 家に着くと、ベッドに横たわり、ユウマの顔を思い浮かべる。



 よーし泣くぞ。今から絶対、泣いてやる。






 プルルルル……






 なんという間の悪い着信。嫌がらせかよ。







 『もしもし、先日幽霊になりましたユウマといいますが』
< 1 / 29 >

この作品をシェア

pagetop