【短編】海に降る雪
「私達さ、こうやって電話すること、あんまり無かったよね」
『そうだな。俺は電話したかったけど、エーコかけるといつも不機嫌になるだろ』
そうだったのか。そんなつもりはなかったのだが。
一年近く付き合ってたのに、こんなに気を使わせてたんだな。
「そっか、ごめんね。そういえば携帯はどうしたの?」
『ん、ああ、死ぬ直前に無くしたんだ』
数時間前、待ち切れなくてユウマの携帯にかけてみたのは口が裂けても言えない。
つながらなかったけど、解約はされてないみたいだった。
『こんなに話せるのに、キスもできないのが悔しいよ』
ぶっ。笑わせてくれる。