【短編】海に降る雪
その日の夜、私がベッドに入ったのを見計らったように電話がかかってきた。
『もしもし。今日、神社行ったの?』
「うん、あんたが電話切ったせいで頭おかしい子みたいな目で見られちゃった」
『はー。ちょっとひどくね?』
「ほら、あたしって意外に信仰深いから。成仏しないと悪霊になっちゃうって聞くし」
『そうじゃなくてさ。
死んだはずの彼氏と話ができるって状況、もうちょっと喜んでくれると思ってた』
「それはうれしいけどさ」
嘘をついた。
今、ユウマと話して感じるのは、幽霊としゃべっているという好奇心だけ。
元々、ひんぱんに電話をするような付き合い方じゃなかったし。
恋する乙女の甘酸っぱい気持ちがわかないことに、自分でも嫌悪感を感じる。
なんでなんだろう。私ってやっぱりズレてるのかな。
「そういえば、どうやって電話かけてるの?」
『自分でもわかんない。なんつーか、ハッ! って念じるというか』
「へー。幽霊も大変ね。他の番号にはかけてみた?」
『ん……いや。エーコの携帯にしかかけられないみたい。
ほら、やっぱ思いが通じ合ったんだよ俺たち』
「そっかー」
『あのさ。クサい台詞スルーされると恥ずかしいって事、知ってる?』
「私のこういうトコが好きなんでしょ、あんたは」