黒い羽根
どうにか説得を試みるも。
「迷惑?」
僕の言葉を反芻したマリアさんは眉をピクリとさせたかと思うと、ニヤリと意味深な笑みを浮かべ。
「よっく言うよ~。死にかけておいて『良かった』助かったとわかった瞬間に『残念』なんて思ってたくせに」
けらけらと笑い出した。
「死にたい死にたいって思ってるんでしょ? 母親なんだからあんたの気持ちなんてぜ~んぶお見通しっ。そんなこといっつも思ってるような奴が自分がいないと迷惑かけるとか、店長が一人で大変とか考えるのってな~んか矛盾してない?」
「……っ」
言われた言葉に絶句する。
確かにマリアさんの言う通りで。
いつ死んでもいいと……それどころか、寧ろ早くこんな世界におさらばしたいなんて思ってる人間が、そんなこと気にしてるというのはどこか変な話ではある。