黒い羽根


 さっきもうすぐ死ぬんだと言われて、動揺した自分。

 よく考えてみればずっと望んできたことで、マリアさんのいうとおり喜ぶところな筈だった。

 だけど、その待ち望んだ時が来る前に、聞いてしまった。



 全ては羽根が原因だということ――



 だから、ちょっとだけ揺れたんだ。

 羽根が無くなれば、普通に楽しく生きていける――

 そんなことを考えた。

 結局のところ僕はいまだ無様に生にしがみつこうとしているのだ。



 なんて臆病で貪欲。

 我ながら情けないと思う。



 結局のところ、よく考えれば……羽根がなくなっても、変わることなんてないのに。 

 たとえもう、あの耳障りな悪意が聞こえなくなったとしても、アレを知ってしまっている僕は、これからも普通に人を見ることなんて出来やしない。

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