黒い羽根



 疑いと悪意に満ちて。

 臆病で貪欲で。

 醜い―― 



 そんな自分自身もまた憂鬱で。

 どうせ変わることが出来ないのなら……この先生きていたって苦しいだけだ。

 そうだ、ずっとうんざりしてたんじゃないか。

 誰しもを疑わずにいられない世界で生きていくことに。

 そうせずにいられない自分自身に。

 今更、未練なんか。

 再び、凝りもせずそんな生活を続けていくつもりなのか?

 馬鹿げてる。

 僕はもう充分わかっているはずじゃないか。

 僕の世界はずっと灰色のまま、淀んだまま、変わることは無い。

 一度知ってしまった世界の色を塗り替えるなんて出来ない……忘れてしまうことなんて出来やしないのだから。

 疑うに足る、事実を知ってしまっている僕は、これから先どれほど生きたとしても、疑うことをやめられはしないのだろうから……だったらそれは望むに足る価値のある生と言えるのか?

 答えは、否だ。


< 39 / 114 >

この作品をシェア

pagetop