黒い羽根


「う……っわ!!」

 まるで鉄製のフライパン同士をすぐ耳元で思いっきり衝突させられたような馬鹿でかい、重くて頭が割れてしまいそうになるほどの金属音。

 あまりに大きな音に思わず耳を押さえ、恐る恐る音がした方を振り返る。

 音が聞こえてきたのは、マリアさんへと振り向く直前まで僕が進もうとしていた方向から。

 そこに。

 僕の場所から歩幅一足分のその場所に……大きな鉄骨が転がっている。

「あら~……残念」

 状況に似合わないマリアさんの能天気な声。

 それと反比例するかのように焦りに焦った大声が聞こえる。

「大丈夫ですか~!!」 

 声の方を見上げると、ヘルメットをかぶった作業着姿のおじさんが、組まれた足場の上から血相変えて叫んでいる。

 僕らは建設中のアパートのすぐ側を歩いていた。

 そのアパートを囲うようにとりまく鉄のオブジェの一部が欠けている。

 どうやら足場の一部が何かの拍子に外れて落ちたらしい。


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