黒い羽根




 そう……僕は何故か、人の心が読める。

 ずっと小さい頃から、きっと生まれつき。
 
 そばにいる人の、閉ざされた唇に封じ込められた色々な感情や言葉を、僕は聞くことができた。

 隠され、飲み込まれた言葉は、大抵は暗くて重たく。淀んでいる。

 そして人が持ちうるであろう様々な感情の中でも特に――

 悪意、とでもいうのだろうか。

 醜い、黒い……そんな感情は……僕が望まずとも、意識せずとも、常に僕の中に勝手に流れ込んでくる。

 望まなくとも勝手に聞こえてくるそんな感情からくる言葉達は、とても五月蝿くて……不快で。

 僕は、ずっとうんざりしていたのだ。


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