黒い羽根
自分が特異な体質なのだと自覚したのは小学校に入ってから。
それまで沢山の人間に囲まれることなく、家族やごく僅かな人間としか接することなく生活してきた僕は、避けて通ることの出来ない初めての集団生活の中で、そんな声がいつも聞こえるのは自分だけなのだということを知った。
子供だって、一見無邪気に楽しそうに見えても、胸のうちには色々な感情を抱えている。
笑顔で笑っているクラスメイト達も勿論。口には出さない、悪意と呼ばれるに十分に足る、暗い感情や耳を塞ぎたくなるような言葉を、その小さな身体に内包していて。
そして、それは防ぐ術を持たない僕の耳に勝手に流れ込んできて、僕の胸を痛めつけた。
誰も信用できなくなるのにそう時間はかからなかった。
僕はそれを聞きたくがないために、自然と、人の輪から外れるようになった。
それが、自分を守るための唯一の手段だったから。