黒い羽根
それでも、僕を放っておかず近づいてくる、一般的には親切だと言われる、面倒見がよかったり、好奇心の強いタイプの人間もいたけれど。
やはり誰といても、僕を苛む暗い影のような声が聞こえないということはなく。やがて、それは誰しもが持つもので、そういう自分自身も同じなのだと理解した。
人は皆、そんな感情を、言葉を持つものなのだと。
高校に入る頃にはそのことを悟っていたし、ある程度慣れてきてもいた。
誰とも接することなく生きていくことは不可能に近い。
だから、最低限の接触は仕方ないことと割り切り、不自然に思われぬくらいの交流をしながら適度に距離をおいて周りとやっていく術を覚えた。
けれど。
だからといって痛みがなくなったわけではないし。聞こえてくる悪意を防ぐ術を持たないことにはかわりない。
どんなに聞くまいとしても、耳を塞ごうとしても、人と接すれば……やはり何らかの雑音が、大なり小なり聞こえてくるものだ。
そして僕は、そうしようと思えば、悪意以外の隠された心の声も読み取ることができる。
なのに……。
得体の知れない、今、目の前にいるこの女の人。
何を考えているのかと、確かに僕は彼女の内側に耳を傾けたはずなのに。