黒い羽根
「……何で、聞こえないんだ?」
心を読めない相手に出会い困惑する僕の言葉は、再び彼女に奪われる。
彼女の中からは何の声も読み取れず、逆に、そんな僕が口に出さずにあげた心の声を、彼女はどうやって知ったというのか、その形の良い真っ赤な唇で暴きだすのだ。
こんなことは、初めてだった――
「さあて、何故でしょう~?」
戸惑い、うろたえる僕を見ながら、僕の母親を名乗った女の人、マリアさんはやけに嬉しそうに笑っている。
楽しくてたまらない、まるで顔にそう書いてあるみたいだ。
「知りたい? 知りたいよね~もちろん」
「…………」
声もだせずにいると、僕の肩をがっしと両手で掴んで。
「こら、聞いてる? せっかく久し振りに訪ねてきた母親が、君の抱えてる疑問全部にお答えしちゃうぞって言ってんだよ。もちょっと喜びなさいって」