終焉の夜明け
「――なぁんて。まじで
キスすると思ったぁ?」
アタシは、あと数センチで
唇が触れるころに、彼を
思いきり睨み付けた。
「……バラすよ?」
目を細めた彼の目尻は
つり上がっていて、
まじで狐にそっくり。
クスクス笑みをこぼして
アタシは彼から離れた。
耳を澄ませると、喧騒の
国道の音に紛れて、低く
腹にひびくエンジン音が
聴こえてきていた――。
「あんたが現れたときに
すでに手は打ってある」
ずるい女なアタシは、柚樹に
「助けて」ってメールした。
お陰でさっきから、アタシの
ポケットで携帯が震えっぱなし。