終焉の夜明け
「乃衣さん掴まって」
「……乃衣で良い」
年上からさん付けは
気持ち悪いだけだ。
それにアタシは、単に上の奴等と
仲良いだけの“囲われ姫”だ。
アタシ自身に実力はないから
呼び捨てにされていたい。
……些細なことで“特別”ではないと
自覚していないとそうでなくなったら
アタシは潰れるから、これは“保険”だ。
少しだけ目を見開いた波瀬は
ニヤリと笑って「乃衣」と
言ってくれた。
うん、これが良い。
集会の集合場所に行くと
案の定アタシは、愛樹の
ケツに我が物顔で跨がる。
トップが好き。
好かれる地位が好き。
特別扱いが好き。
……アタシはそんな
存在じゃないのに。
敬われる方法を知るアタシは
ずるい女だと、やっぱり思う。