終焉の夜明け
流れる景色は、
余計なことを思い出させないほど
高速に掻き乱れて行く。
身体を貫く風は、
アタシの身体事態を吹き飛ばす勢いで、
バカみたいな悩みを忘れさせてくれる。
耳をつんざくようなエンジン音は、
聴きたくない噂や会話や笑い声や怒声を
全て消し去ってくれた。
アタシは、“風”の中にいると、
無心になれた。
嫌なことも、楽しいことも、
全て忘れて。
ただ、世界に
アタシひとりでいる気分になった。
だから、余計なことは考えずにすんだ。