終焉の夜明け




「大丈夫」って樹梨が
訊いてこないのは、

「大丈夫」じゃないこと
理解(わか)ってるから。





「大丈夫?」って言われて
「大丈夫じゃない」って

言う人の方が、
世の中少ない。





「そいえばコイツだぁれ?」




樹梨は自らの足の下で
悔しそうに呻いている
野郎の腹を一殴りして

アタシにクリクリした
愛らしい瞳を向ける。




「知らない。里緒と純と
3ケってたら、いきなり
話しかけられてきただけ」



「……フゥン?
新顔かなぁ?

何にしても要(い)らねぇ」



樹梨は不機嫌そうに呟くと
おもむろにケータイを取り出し

どこかに電話していた。


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