『若恋』榊の恋【完】
「額の出血は派手なものだからな。大したことがなくても流れる」
大丈夫だ。
「で、あの辺に詳しい奴はいるか?」
若が仁に聞いても肩を竦めてみせた。
前広も一也も中学校近くは詳しくはないらしい。
「拓也ならあの辺わかるだろ?」
「あの辺には廃屋がかなりあってひとつひとつしらみ潰ししてくのはちょっと…」
誰もが黙った。
「行くぞ。大きいとこから順に。俺は仁、榊と。前広は一也、拓也と組め」
「若、もしかしたら。」
「なんかあるか?」
「病院かもしれません」
そうだ。
もしかしたら病院。
怪我をして逃げても医者にはかかってなかった。
きっとひとつ病院を手に入れてるはず。
「病院か…」
「ぐずぐずしてられません」
「龍神会近くですし可能性高いかと」
「よし、出るぞ。それぞれに用意しとけ。榊は携帯出しとけ。きっと鳴るはずだ」